23. 「やりたくない」って言ってもいいの?

23. 「やりたくない」って言ってもいいの?

店長として実績を出してきたことを買われて、伊勢丹新宿内で、フロア移動の話が持ち上がった。
しかし、その後は思うように結果が伸びなかった。

『辛くない』『まだ何かできる』『新たなお試しなんだ』自分に言い聞かせながらの毎日。
「ここだと落ち着かないわね。商品も変わった?」お客さまからの言葉に、何度も心が折れそうになった。

売り上げがあがらないまま約三ヶ月が経った頃、本部から突然の銀座店への異動を言い渡された。現在は予算、前年とも5割まで落ち込んでいた。 百貨店のデータ分析やお客様の声を聞いてまとめてみると、原因と結果がみえてきた。

「問題点は本部でもわかっている。 改善はしているが、今すぐ商品がどうにかなるものではない。 その為には、まず店が数字を上げなければ、商品作りもできないだろ!」提出したレポートに目を通して部長が言った。 何回、この言葉を聞いただろうか・・・。

「なんで売れないんだ!?」
「いい加減に、変わりなさい!」
「それはどういう意味ですか?」
「今のやり方は、部下が自分から自発的に動くようなアプローチをしているよね? それでは状況は変わらないんだよ」
「それは・・・部下に指示しろということですか?」
「そう、店長が指示して部下にやらせてください!」

やらせる・・・何とも言えない感情が湧きあがってきて、体が熱くなってくるのを感じた。
大きな声で「ふざけるなっ!」と言いたい気持ちになった。

その夜は、堀口さんのコーチングセッションだった。
「退職しようと決めました。もうこれ以上は・・・やりたくないんです!」
何も考えずに発した言葉だったが、言った後から自分が驚いてしまった。
「やりたくないんですね」堀口さんの一言は、自然なトーンだった。
「やりたくない! て、初めて言葉にしました。 ずっと言ってはいけないことだと・・・思っていました」
やりたくないけどやるためにはどうしたらいいのか?と常に考えて疲れ果てていた。
そして、遠慮して、言いたいことを言えないことが多い自分に気付いた。

「言いたいことを言えなくなった出来事があったんですかね?」
「そうですね・・・その時に、本音を言わないほうがいい。と、自分自身決めました。 友人もいなくなりました・・・・」
「それは大変でしたね・・・AIさんは、悪くないですよ。ありのままの自分でいても 大丈夫です。気を使うのではなく、気を配ることが大事なんです。自分らしくいられるのも、周りのおかげですから。自分らしくいると感謝も増えますよ!」

涙が止まらなかった。 緊張していた体から力がふっと抜けるような感覚、不思議だった。
「やりたくない」と言葉に出したこと、気持ちが良かった。本当の自分の声が聞こえた。
冬のSALEが落ち着いた2月には辞めよう、と決断をした。気を遣いすぎていたことはやめることにした。

12月、緊急の店長会議。まさに自分が退職を決めた2月に、ブランドCLOSEの通達だった。
また、二日後、ある企業からヘッドハンティングの勧誘があった。大きな承認に感動した。

12月のブランドCLOSE通達の日、私は母にその状況をメールで報告した。
「大変だね。仕事どうするの?」
「退職するよ。まだ先は決まっていないんだ。心配かけるね」
「心配!?心配なんかしてないわよ!あなたのことだから、大丈夫でしょ!」
!? 驚いた。ずっと私は、母に心配ばかりかけていたと思っていた。
ずっと、親に愛されていないと思って生きてきたのだ。

「ありのままの自分でいても、大丈夫」
自分を信じていてくれる人がいる。
もう怖くなかった。

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